栄養士のつぶやき No.69|今の私をつくる経験

函館支部 公衆衛生協議会 池上 裕子

 行政の栄養士として2年目を迎え、あっという間に過ぎていく日々の中で、ふと思い出すことがあります。それは、「栄養士」として働く今の私をつくっている「経験」です。

 私が栄養士を目指すきっかけとなった理由はいくつかありますが、その中で今でも忘れることのない経験をお話しします。

 私は、小さな町の小学校に通っていました。全校生徒は60人程度、同級生はたったの10人。身近には海も山もある自然に囲まれ、地域の方々がみんな保護者のように温かく見守ってくれる町でした。そんな環境で育つ中で、今でも忘れることのない経験は、たくさんの「生きた食育」です。

 毎日、温かくて美味しい給食が食べられたこと、畑で野菜を育てたこと、身近な秋の味覚を楽しんだり、お洒落にハーブティーを飲んだり、雪の中でアイスキャンディーを作ったり、漁船に乗せてもらったり、校長先生がそば打ちを教えてくれたり、小さな町だからこそ、小規模校だからこそできる経験をここには書ききれない程数多くさせていただきました。こういった五感を使った経験は、今でも忘れることなく脳裏に焼き付いています。そして、そこで出会った栄養教諭の先生は、私が栄養士を目指す上で初めて目標とした方でもあります。

 日々、人として、栄養士として過ごしていく中で、現在も誰かから何かのヒントをもらったり、何かをするきっかけを得ることが多くあります。それと同時に、今度は自分自身のしていることが誰かのきっかけとなる可能性もあるのかもしれないと思うようになりました。そう思うと、自分自身が行うことにはしっかりと責任を持って、日々成長していかなければならないと背筋が伸びる次第です。

 有り難いことに、行政の栄養士として関わっていく対象者には区切りがなく、お腹の中に居る赤ちゃんから、人の一生において関わることができる立場にあります。関わり方は自分次第で広げていくことができます。より多くの方に寄り添い、栄養士として自分ができることを見つけ、行動していきたいと思います。

 そして、幼い頃からの食育の大切さは、自分自身の経験から、身をもって強く感じています。その時期にどれだけ多くの経験をさせてあげられるかによって、今後の成長に大きな影響を及ぼすと考えます。

 現在、自分が栄養士となるきっかけを得た学童期の子ども達とは、直接的な関わる機会を作ることができていない状況にあります。子どもはすぐに大きくなってしまいます。子どもたちの将来をつくる食により多く関わっていきたいと強く思います。

 行政栄養士としてやらなくてはならないことも、やりたいことも山積みです。日々の業務に追われ、なんのためにやっているのか、自分の核になるものを忘れないよう、経験を積み頑張っていきたいと思いますので、ご指導をよろしくお願い致します。



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