栄養士のつぶやき No.58

「世代交代」

遠軽厚生病院 佐藤由美子


 私は子供の頃数か月に渡り入院していた時期があります。具合の悪さと学校に行けなかったつまらなさを払拭してくれたのは病院の食事でした。毎日決まった時間に出る食事だけが唯一の楽しみです。その頃の給食は夕方4時に夕食が出ます。保温されていない食器にご飯・おかず・味噌汁等がアルマイトのお膳にのっています。今のような温かいおかずは出ませんでした。それでも食事が楽しみです。そして、まさかその病院に十数年後栄養士として働く事になろうとは夢にも思っていませんでした。少し大人になった私は毎日の食事に少し疑問を持っていました。どうして晩御飯は夕方4時なのだろう?どうして常食には鮭や鯖を使うのに特食には白身しか使わないのだろう?どうして病院ではラーメンは出さないのだろう?そんな事を思いながら先輩栄養士に色々な質問をして困らせていました。
この頃パソコンは無く、献立表は手書き、計算も電卓かそろばんです。勤務先も変わり、少し大人が結構大人になったころには、病院食だって決まりを守ればできるはずとの思いで、かつ丼やラーメン・生寿司も献立に入りました。お店でおいしいものを見つけ何とか近づけて献立に役立てたり、居酒屋のデザートをまねて作ったりもしました。そして、給食業務用コンピューターが入り食品成分表を開かなくても献立作成ができる頃には夕食は18時となり家庭の食事時間に近づきます。
ですが、年数を重ねるにつれ変わっていったものもあります。前日から煮込んでいた昆布巻きや煮物等は当日仕入れ当日調理となり献立から消えました。手作りマヨネーズや朝食の生卵、自家製の野菜の漬物や職員総出の茹で蕗もそうです。ウドや浜ボウフウ・タラの芽を患者の人数分取るまで帰らないと頑張った日がとても懐かしいです。
多くの先輩栄養士が定年となり私ももうすぐその年になりますが、今や給食は生寿司やラーメンを越えジンギスカンにビビンバを始めとして、選択メニューや特別メニュー、地産地消・スローフード・食育・ジビエ料理等大きく変わっています。売っていなかったウドや浜ボウフウもお店に売っている時代になりました。ですが、入院患者側にも変化があり、糖尿病食や腎臓病食にも嚥下対応やソフト食など食べる方にあった形態が増えました。それでも、これからも進化してい行くのであろう病院給食はいつの時代も入院患者の楽しみであってほしいと思っています。


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