栄養士のつぶやき No.64

「五十にして天命を知る」って言いますよね

オホーツク支部(福祉) 管理栄養士
勤務先:特別養護老人ホームこもれびの里 酒井多恵子

 北見で生活するようになってから22年。アラフィフということもあり地域の活動に声をかけて頂くことが多くなりました。平成29年は、北見国際技術協力推進会議が実施している「モンゴル国生活習慣病予防と患者のセルフケア能力向上のための看護職人材育成事業」の活動で来日された、医師1名と看護師2名(全て女性)の研修に、日本食の紹介をさせていただきました。

 モンゴル国の平均寿命は50代後半。肉料理を中心とする食生活と、生活スタイルの都市化・欧米化によって、高血圧を中心とした生活習慣病患者が増加しているそうです。しかし、患者のセルフケアはもとより、看護職のスキルも十分ではないため、スキル獲得と育成がこの事業の目的でした。そして、そのプログラムの中で、健康的な食生活について理解を深めて頂く事が私の役割でした。

 テーマはやはり「一汁三菜」でしょう! 調理実習を行えば言葉の壁も越えられるかな? 軽いノリ? いえいえ! 十分重責であると自覚しています。でも、栄養士というライセンスへの依頼は断らないでいよう! 自分のスキルアップと捉え、地域と繋がっていこう! 自分自身も楽しもう! そう考えているのです。ただ…。現実は毎回瀕死の状態です。

 10月25日 前日に昆布・鰹の厚削り・煮干しでシッカリと「だし」もとりました。モンゴルでもよく食べるという芋・人参…。あまり食べないという魚介類には塩麹と牛乳を…。食べ慣れた味に近づけるためのカレー粉…。食材と我が家の食器やエプロンも持参し会場へ。優秀な通訳さんも巻き込んで、調理を進めました。3週間の研修の真ん中に組み込まれた調理実習です。気分転換にもなるのか、柔らかな笑顔で取り組んでくださいました。そして、「一汁三菜」の食卓で使用する食材の多さ、丁寧な手間の掛け方、彩りへの配慮など、興味と驚きを表現してくださいました。モンゴルの食卓は、ワンボール・ワンデッシュなのだそうです。

 最終日、彼女たちの研修報告と送別会が開催されました。研修報告の中で印象的だったのは、「プロジェクターも無い私たちに出来る事など限られていると思っていたが、日本の保健指導は身近な材料を使って教材を作り、理解しやすく工夫されていました。これまで出来ないと思っていた自分が恥ずかしい」という言葉でした。恵まれた社会の中で仕事をしていても、出来ない理由を並べる自分が時折顔を出す事もあり、反省…。

 送別会では、看護師の一人が私の元に走り寄って来てくれて「日本食は素晴らしい! 私2㎏も痩せたの!」と報告してくださいました。彼女は帰国後、健康教育の教材として塩分パネルを作成しています。さすが選抜された研修生。モチベーションの高さに感心です。また、医師からは、「滞在中、日本の皆さんから食事は口にあっていますか?と よく聞かれ、日本人が食を大切にしているのがわかりました」と伺いました。私たちは、その日本で、食と健康をつなぐ仕事をさせていただいています。今回の経験を大変光栄に思うと同時に、次年度の提案内容のステップアップを日々の仕事の中から掘り起こさねば! と考えています。誰のために? 自分の為に! 栄養士というライセンスの為に! 地域の為に! モンゴル国の為に!



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