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我が家の「くじら汁」

後志支部長 戸谷 典子(潮見台内科クリニック勤務)

 我が家の正月にかかせないものを挙げるとしたら、筆頭にくるのが「くじら汁」だろう。毎年、年の瀬が近づくと炊き出しかと勘違いするほどの大鍋を取り出し、必ずこの料理を作る。
 作り方は、最初に野菜類を油で炒め、だし汁、醤油、酒、昆布を加えて、さらに塩クジラをいれて二日がかりでグツグツ煮込むのが我が家流だ。時間が経つほど味がしみて、塩クジラと昆布と野菜が互いに味を出し合って、自然といい味になる。
 毎年、毎年、同じ作り方だけど、すこしちがう味がする。「今年の味は?」何度も味見をしに台所に来る息子。
 いよいよ年取りの料理の一番良い場所に並べて、はしを付けてくれるのを待つ。「おかわり」そう言われた私は、嬉しそうに、台所へと急ぐ。我が家の正月は、このくじら汁を食べる笑顔で過ぎていく。
 祖母から母へ、そして我が家の味へと代々受け継がれた味である。わたしは、長い間この料理は、どこの家庭でも食べているものと思っていた。でも、ある日息子が友達に聞いてみたところ「たべないよ~」「しらないよ、それ何?」と答えたのに驚いて帰ってきた。意外な展開に私は驚き、松前、江差をはじめ日本海沿岸の漁村で正月料理に欠かせない料理のひとつであると初めて解った。
 さて、くじら汁は、塩蔵したくじらの脂身を短冊に切って湯通ししたものに、豆腐、コンニャク、大根、ニンジン、ごぼう、ふき、わらび、ぜんまいなどを入れ煮込んだ実だくさんのすまし汁である。くじらは漁村では「恵比須」と呼ばれ、にしんを浜に追い込む縁起のよい動物であることから、その年の大量を願う意味と、くじらが潮を噴き上げる勢いの良い様と巨大な勇姿にあやかって大物になるようにと、道南、海岸地方はもとより東西沿岸漁村では古くから、年越しや正月料理として欠かせない晴れの料理としてよく食べられた。大鍋に大量に煮込み、三ケ日の食べ物とした。くじらの脂身は、かつては貴重な保存食品の一つであり、明治初年ごろは赤身肉より価値が高かった。刺身、ぬたにもするが、松前地方ではふだん使えない保存食料だけに、汁物にするのが最も効果的であり、寒い北国の食べ物として適していた。取り合わせる野菜は、何度も温め直しても煮崩れしない素材が用いられる。冬の長い北海道では、たんぱく質やビタミンが不足しがちであったが、その解決策としていつとはなしに漁村の人々が考え出したものである。

・材料(4~5人分)
塩くじら200g山菜各種適量
コンニャク1/2枚豆腐1丁
ごぼう50gしょうゆ大さじ2
だんこん300g4~5カップ
にんじん80gこんぶ適量
        


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