栄養士のつぶやき No.14

次世代に残したい行事食

北海道大学水産科学研究科 管理栄養士 村木 牧子

 晩秋のお月様の美しさに見惚れておりましたら、いつのまにか雪の結晶の繊細さに愛おしさを感じ、四季の変化の優雅さに心のゆとりを求めております。わたくしの幼い頃は、季節ごとの行事が今より大切にされ、その度ごとに、皆が集まりハレの日のご馳走に幸せを感じながら育ったものでした。
お正月は、節会料理をお重詰めにして主婦が休めるよう水仕事からも解放され、火を使わず火事を出さぬよう新年を何事もなく過ごせるようにとまわりへの配慮をしておりました。お雑煮やお料理は各家庭で伝わる味があり、それぞれのお家流を、姑から嫁に伝えたものですが今は核家族が増え伝わることが少なく残念に思っています。
七草粥は、日本は古来より豊葦原瑞穂国と称されお米を大切にしてきた先人達が、残した食生活の一番の宝ではないでしょうか。食すると心が優しくなれるような気がします。
お雛祭りや端午の節句は、慎重にお飾りする母の手に優しさを感じ、息を止めて見入っており、お人形等生きていないものにも人と同じように接する心を学びました。お雛祭りは前日から下ごしらえをした、ちらし寿司、菜の花のお浸し、蛤のお吸い物、甘酒とお定まりのお食事。端午の節句では赤い腹掛けをした金太郎さんや兜の前にお赤飯や鯛の尾頭付きをお供えして子供の成長出世を願い、食卓いっぱいに並べられた手料理に親の愛情を感じながら粽や柏餅を食べ菖蒲湯に入り寝入ったものです。
この頃は、行事食も簡素化されたり四季折々の旬の素材、海の幸、山の幸を満喫することもなく日常の食卓には手料理がうすれスーパーのお惣菜や簡便なレトルト食品、インスタント食品ですまし、「 あ~ 美味しかった 満足 満足!」という声をきくと、他人ごとでも私の頭にビックリマークと怒りマークが付きます。
学生や若いお母さんたちに私がよく言うことですが、「 カップ麺や加工食品を多く食べているとケミカル人間になってしまい、心の目も体も貧しくなり、より良い人生を歩めなくなります。」
ご自分やお子たちを大切にするためには、一番に心を込めて手料理を作り、美味しくいただきお子たちを抱きしめ絡み合って家族団欒を楽しみ、それぞれの絆を深めてしっかりとした関係が築けたら、すべての事がいとおしく大切になりもっともっと生きがい深くなるでしょう。

次世代を担うお子たちへ
日本の美しい旧習や行事食を大切にし、心を豊かにする
正統な食文化を受け継いで、次の世代へお渡し願います。



【紹介者:函館市立亀田中学校 栄養職員 鈴木みどり


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